服の小噺 Vol19.
2023.10.15
clothierが好きな服達
お久しぶりです。
A.Iでございます。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
今年の夏は暑過ぎましたね。。。。
ですが、漸く、やっと、待ちに待った涼しき風を感じる様になりました!
色々、洋服達を着こなす楽しい季節到来です!
。。。。と、一人テンション高めで失礼いたしました。
私も超が付くほど久しぶりにブログをアップします。。。(気分屋ですみません。。。)
今回はclothierが好きな服達と題しましてお贈りしようかと思うのですが、ブランド紹介とかではなくてですね。
clothierが服を見るポイントと申しますか、「洋服達のココが好きなんだよなー」と言う部分を掘り下げられればと思います。
古着と言う事で基本的には既製品(たまにオーダー古着も出ますが)なので特注品(オーダーメイド)には適わない部分はあるものの、既製品の中でも結構頑張っている洋服達もいる訳で、頑張っている服達を見つけ、ご紹介出来るのがこの仕事の楽しみの一つですね。
ジャケットなんかは詳しい方も多いと思いますが、改めて、「こう言う所、よく見てます」的なお話をすると。。。
例えば、ラペル。
一番解り易い部分としては「際縫いの手縫製」ですね。
ラペルの際ギリギリで手縫製にて仕上げるこの美しさは一番気になってしまう所です。
また、この写真で言えば他にも上衿部分のカービングにお気付きでしょうか?
肩から胸に掛かる立体的な丸味に対して、それに美しく”添う″様にカービングされています。
既製品にも関わらず、職人魂を感じずにはいられないですね。
内側も大事ですよね。
むしろ私は、内側こそ重要と考えてます。
なんでもそうですが、人の目に触れ難いところほど簡略化し易いのは世の常でして。
人の目に触れ難いところこそ手を抜かないのがクラフトマンシップと言うのでしょう。
写真にはポケット補強。
表地を使い、ポケット口の補強と美しさを加えた作りで、更に裏地の留め縫いも手縫製で仕上ています。
素敵です。
因みにイタリア物はこの手の仕様が多く、台場仕立てはイギリスやアメリカ、日本で多く見かけますね。イギリス、アメリカ、日本はカッチリ仕上げる思考が強く、イタリアは限りなく、柔らかく、軽く仕上げる思考の違いかと思われます。
イタリアブランドでも台場仕立てはやりますけどね。
例えばLARDINI。
LARDINIは台場仕立てにパイピング装飾までしてて、とても美しい。
内側の美学を感じます。
脇の下の汗止め。
意外と付いて無いジャケットが多いんですよね。
脇汗って結構ね。汗かきますよね。私だけでしょうか?(汗)
表地に汗染みを出さない工夫として考案され、実際に汚れてしまっても、取り換えが利くパーツでもあります。
有って嬉しいパーツだったりします。
こんなバージョンも有ります。
裏地一体型で汗止めの役割と裏地の可動域確保で考案された仕立てですね。
胸ポケットも見ちゃいますね。
こちらはカービングポケットになります。弓の様に肩に向かい跳ね上げたカーブを描き、縫製するやり方ですね。
こちらは着用時を想定して、胸の張り(膨らみ)に合わせて美しくポケット口を見せる手法です。
ポケットチーフを入れる時に立体的な美しさを表現出来ますし、チーフを入れなくても手の込んだ縫製が成されている事が一目で解ります。
かなり計算されたパターン(型紙)を要求されますね。
後、お気付きになられたかも知れませんが、ちゃんとポケット口も「柄合わせ」をしていますよね?
ポケット口をカービングさせている上に柄合わせしているなんて、もう、頭が上がりません。
生地の採り効率を考えると、贅沢な造り方なんです。
なので、柄のジャケットや洋服って、手が込んでるか、込んでないかが解り易いので、現代に無地の服が多い理由の一つかも知れませんね。
フラップも柄合わせ。。。
素敵です。
こちらは「雨振袖」です。
たまにしか手に入れられませんが、イタリアを代表とする仕立て方です。
肩の可動域を確保する為に考案された作り方ですね。
通常ですと、「裄綿」を入れ、アイロンワークで綺麗に縫製(イギリス、アメリカ、日本なんかは特にその思考が強いかなと思いますね、)するのですが、最高品質の生地が持つ柔らかさであったり、ドレープ感を表現し、且つ、肩の可動域を確保する仕立てを考える所は「生地の国」たるイタリアならではなのかもしれません。
また、かなり熟練された職人でなければ、生地の特性、人体工学的なものを計算しなければならない為、非常に難しい作りとされています。
他にも本切羽仕立てや額縁仕立て、フィッシュマウスラペル(鯛口)等、上げたらキリが無いのですが、今回はここまで。。。
また何かの機会がございましたら、アップしようかと。。。
clothierに並んでいるジャケット達。
続いてはパンツ達になりますが、当然シルエットが大事なのは言うまでもなく。。。
ただ、ポイント的には「ここかなー」と言う部分を一部抜粋。
ぱっと見で解り易いのがポケット口の「両玉縁」とその端の仕上げである「Dカン留め」ですかね。
特に「Dカン留め」はアルファベットのDを模った様な仕上方を言いますが、ポケット口の端をカン貫き留めをした際に玉縁の余り生地部分を更に美しく押さえ込む為の仕様となります。
「私、手間かけてます。ハイ。」的な仕様ですね。
後はパンツの内側の仕立てになりますが、「シック使い」なんかはやっぱり見ちゃいますね。
これは「お股」の縫い代にもう一枚生地を当て込む仕様になりますが、「汗染み防止」「股裂け防止」「股擦れ防止」等の意味合いを持ちます。
汗止め同様、取り換えの利くパーツでありますし、本体の股の縫い代よりも先に力が掛かる設定になっていまして、股の縫い代の負荷を代役してくれるパーツですね。
意外と付いてないブランドが多いです。
内側のウェスト内掛け(持ち出し)なんかも気になりますね。
オーダーメイド等では左右から持ち出し三つボタンの内掛け等あったりしますし、色々な工夫がされていたりします。
ウェストの収まりをしっかりホールドする為の工夫ですね。
こう言う見えない所のこだわりを見ると「萌え」な訳です。ハイ。
タックの入れ方なんかも気にしてますね。
こちらは「インタック」。
着用した時にセンタープレスが綺麗に立ち上がるのが特徴ですね。
着用した時に前から見るとシャープなシルエットに見え、横から見ると太く見えるシルエットになります。
その昔、80年代後半から90年代前半のジョルジオアルマーニがよくやっていたタックと記憶しています。。。
こんなのもあったりします。
「アウトタック」で4タック(凄)。
ここまで来るとデザイン重視的ではあるのですが、ここまでタックを入れると言う事は必然的にワタリ幅の広い太いパンツと言う事になりますね。
更に一言付け加えるのであれば、それだけ生地を使う訳でして、今となっては贅沢な造りとも言えるかと。。。
ウェストのサイドアジャスターベルトとかね。
やっぱり好きなディティールです。
今期はイタリアンツィードにも注目。
4色以上の糸をイタリアらしく複雑な織方で素材感を演出していて色の深みがイイ。
現代では非効率(生地を作るスピードやメイン色以外の糸の余り具合等)な為、単色で織編む生地がほとんどですよね。
この色合いや風合いは現代にはなかなか無いかと。。。
特に、着こなし的な側面としては、コットン素材のアウターやレザーアイテムとの相性は抜群です。
また、個人的観点になりますが、イギリス等のガチガチなツィードと違い、柔らかく、風合いが良い物が多いのもイタリアンツィードの良さと思っています。
そんなイタリアンツィードのパンツに合わせるなら、やっぱりレザーと言う事でですね。
ホントに「ご飯のお供」的な存在のレザーアイテムです。
逆を言えば「レザーアウター持ってるけど、デニムしか合わせるパンツしかないや」と言う方にはアーバンライクな着こなしにイタリアンツィードパンツは最適です。
で、
そのレザーと言えば、当店では基本的にバルスタータイプのレザーブルゾンが多いのですが、選ぶポイントとしてはですね、VERA PELLE (ヴェラペッレ)と言う植物タンニン鞣しの革を主として選んでいます。
革質の滑らかさが違うかなと。
また、仕様面で言えばリブの仕様と襟のリブの付け方を見てます。
通常と言いますか、バルスタータイプのリブはリブに直接ボタンホールを開けるのですが、当店では前立てがあり、そこからリブを当て込んでいるタイプのデザインを好んでいます。(あくまでも主観的ではあるのですが。。。)
こちらの仕様の方がリブに直接ボタンホールを開けるより、ボタンホールの強度も上がりますし、リブ端の始末も綺麗かと。
次にリブ自体の作りですが、柄と言いますか、ちゃんと織編んでいる物を選んでます。
こんな感じ。
織編んだリブだからこそ手間暇を掛けた高級感がありますし、レザーと一緒に染める為、レザーとリブの色ブレが無いんですよね。
通常のリブは「有り物」で所謂、付属品で初めから色が決まっていますし、リブの編み方も決まっています。
ですので、本体のレザーの色とリブの色が違うアイテムは大凡、「有り物リブ」を使用していると思われます。
わざわざ作るリブは「折角作るんだから織柄入れたいよね」になるんです。
リブ単体の金額も段違いになりますし、ロットも発生するので、現代ではなかなかやらないですよね。
後姿も絵になります。
他にも選ぶポイントは様々ありますが、条件を満たすバルスターはなかなか、意外と、“無い”んですね。
有名でないブランドのレザーアイテムでもしっかりした仕上がりの物は店頭に置きたくなる訳です。
次のアイテムはリバーシブルコート。
イタリアのリバーシブルはイギリスの防水を兼ねたボンディングでない物が主流です。
イタリアの方達は生地の風合いを保ちたい志向が強く、ボンディングだと生地が硬くなる為、あまりやらないですし、そもそもイギリスと気候が違う事も要因かと。
で、
生地の良さを最大限に活かす為に、イタリアのリバーシブルはこれまた面倒な作りをしている訳です。
コットン面の生地とウール面の生地との間に空間をつくり、生地を浮かせるんです。
こんな風に。
生地と生地を張り合わせる箇所はあくまで形を作る縫製部分のみ。
ちょっとやそっとの縫製では「吊り」が出てシワが入ってしまう様な作りなので、当時の縫製師さんには脱帽でございます。
また、リバーシブルと言う事で、袖のループデザインとかなんかはですね。。。
このループの根元にホールを開けて。。。
このホールに表からループベルトを通して。。。
こうなる訳です。
なんてイタリアの人達って小粋なんでしょう!
的な。
洋服を見るポイントはシルエットやスタイル、生地、ブランドネームバリュー等、様々ではございますが、それプラス、当時の人達はどんな考え方をして洋服を作っていたのだろう?と思いを馳せるのもまた一興かと。
何が良い服であるかは人それぞれで、ファッションは自由であるべきものと考えますが、だからこそ、その洋服達を見るポイントは必要不可欠な要素の一つを思う訳です。
話は長くなりましたが、本日はここまで。
また、気が向いたらネタをアップできればと思います。
その時はまた、お付き合い頂ければ嬉しいですね。
それでは、また。
TEXT by A.I