服の小噺 Vol.16
2021.11.18
皆様いかがお過ごしでしょうか?
そろそろ本格的に夜が寒くなり、コートが着込める季節になりましたね。
今日はローデンコートの話を軽くしようかな?と、思います。
ローデンコートの由来は諸説ありますが、18世紀頃、チロル地方(オーストリアの右隣、イタリアの北部にあたる山間部の寒い地域であり、年代によってその地域を治めていたのがオーストリアであったり、イタリアであったり、ドイツであったりした地域です。
今でも自治州と言うところで様々な文化が流入し、独自の伝統文化を築いています。)の貴族の狩猟用のコートとして考えられたのが始まりと言われています。
その後、その貴族への憧れや、羨望と共に流行、庶民化し、伝統化したとの事です。
今も昔も変わらず、カリスマ性を持つ方々が先鋭的な服を着ると流行る訳なんですね。。。
当然、人々へ浸透するには美的センスのみではなく、実用性もあったからこそ伝統化していった事は言うまでもありません。
例えば、ローデンと言えば「フローティングショルダー」と言われる独特なディティールは銃を構える時に動き易さを考慮したものと言われています。
個人的な見解も加えますと、雨水や夜露を避けるフロッグコート的な要素もあったのではないかと推測します。
この肩の作りは縫製が難しく、日本でも縫製出来る工場は少ないと言われ、大量生産には向かない作りですね。
背中にも「インバーティッドプリーツ」を施し、生地を贅沢に使い、可動域を増やす役割を加えています。
銃を構え、立膝を付く時には広がり(Aラインなシルエット)、立つ時にはプリーツが閉じる(ボックスシルエット)となる事を想定しているのではないかと思います。
(済みません。。。写真撮り忘れました。。。)
また、元来着丈の長いコートですので、パンツのポケットにアクセスし易い様にフロントポケットとは別に「貫通ポケット」も配してます。
Burberryのトレンチコートにも見られる仕様ですね。(少々作りは違いますが、発想は同じかと。)
獲物を狙って山中を歩き回り、コート内の熱気を逃がす為と動き易さを考慮した脇下のベンチレーションも成程な訳です。
また、ライフルを構える時に腕を前に振り易くする為の可動域確保だと思います。
ちゃんと開け口の部分に裏地を多く採り、パイピングを施すのも気が利いてます。
袖口とポケット口にはレザーを配し、生地の擦れ防止も配慮しています。
肌心地も考えているのでしょうね。
スウェードレザーなんですよ。
襟も基本的には立てる事が出来、防風性も考えられています。
襟裏はチェックなのはダブルフェイスの生地を使っている証ですね。
生地の話が出てきたのでここで生地の話になりますが、ローデンコートは基本的にダブルフェイス(簡単に言うと2重織になっておりまして、生地の両面が表地として使えると言う、とっても贅沢な生地)に加え、防水、防風と保温性を考えた目の詰まった生地に仕上げています。
また、基本的にバージンウール80%、アルパカ20%の組成で作られ、上記の内容を加味した生地を伝統的な「ローデンクロス」と言うのですね。
そんな生地を惜しみもなく贅沢に使い、贅沢な仕様で作成する訳です。
前身の大身返しの仕様なんかは、もう、贅沢の極み的な作りですね。
色合いも有名なのがグリーンで「ローデングリーン」とも呼ばれ、国際基準の色として認知されています。
しかしながら、ネイビーやグレーもあり、様々な着こなしが出来る様になっていまして、特にネイビー等は街着として重宝するでしょうね。
等々、仕様面をお伝えしましたが、80年代頃から上記の仕様をオミットした内容で、街着化したものも増え、より、オシャレとして着用される様になってきました。
(まぁ、上記の内容ゴリゴリだとオーバースペックだったり、縫製が面倒過ぎるのかもしれませんね。)
日本ではあまり知られていないローデンコートですが、80年代にイタリアで流行った経緯があり、イタリー製のローデンコートも多く見られます。
clothierではオーストリア製もイタリー製も多く取り揃えております。
その中でもローデンコート4大ブランドをご紹介します。
先ず初めに、
SALKO(サルコー)
ローデンコートの最高峰として知られ、クラシカルでトラッドなブランド。
SALKOと肩を並べる日本で一番知られているブランドのSCHNEIDERS(シュナイダース)
記憶が定かではないのですが、80年代後半から90年代に掛けてユナイテッドアローズさんが輸入して展開したのが、このシュナイダーだった様な気がします。
流石と言いましょうか、感服いたします。。。
上記のブランドと比べ、トラディショナルなアイテムを展開しつつもカジュアル路線も強いのがsteinbock(シュタインボック)。
山羊のマークがかっちょいいです。
個人的には好きなブランドですね。
最後にLODEN FREY(ローデンフライ)
このブランドは上記のブランド達より、よりカジュアル感の強い展開をしている様に思えます。
やや若者向きと言いますか、ラフなイメージを個人的に持っています。
等々、ローデンコートの話をさせて頂きましたが、現行のアイテムと比べ、ビンテージ物は時代性も含めやや身幅があります。
現行の商品はタイトなシルエットが多く、よく「肩幅丁度が良い」と言われる方がいらっしゃるのですが、そもそもビンテージであり、狩猟用のコートでもあり、現行のスタイリッシュなローデンコートとは一線を画すのはご理解頂けたら幸いですね。
生地を贅沢に使った贅沢な仕様のコートとして認識して頂ければ嬉しいです。
仮に日本国内で生産するのであれば、生地、仕様を考えると、その価格帯は想像に難くないかなと。
そう言った意味でもビンテージを楽しんで頂ければ尚、嬉しいですね。
TEXT by A.I